
かつて花巻北高校で音楽を教えていた頃、1年生の授業では、終了5分前に質問の時間を設けていました。
すると、生徒たちから何度もこんな質問が出ました。
「先生、なんで勉強するんですか?」
とても素朴でありながら、実は簡単には答えられない質問です。
5分間で答えられることではありません。
ですから、その後の音楽の授業を通して、勉強することの意味や大切さを伝えてきたつもりです。
当時、花巻北高校では「東大に入るには音楽クラス」と言われるほど、音楽選択クラスの生徒たちの成績が良かったことがありました。
私は、それが音楽を選択したからだとは考えていません。
「絶対に音楽を選択したい」
そんな強い希望を持つ、学ぶことへの意識が高い生徒たちが、2クラス分集まっていたからだと思っています。
自分で選び、自分の意思で学ぼうとする。
その姿勢が、ほかの教科の勉強にも表れていたのではないでしょうか。
ピアノを通して伝えたいこと
私は、長年のピアノ指導でも、勉強することの大切さを伝えてきました。
中学校や高校の先生方から、
「まりこ先生は勉強させるよ」
とおっしゃっていただいたこともあります。
ピアノのレッスンは、ただ曲を弾けるようにするだけの時間ではありません。
先生の話を聞くこと。
分からないことを考えること。
できないことを、すぐに諦めずに繰り返すこと。
自分で工夫し、少しずつできるようになる喜びを知ること。
こうした経験は、ピアノだけでなく、学校での勉強や、その後の人生にもつながっていくと考えています。
幼児期に身につけてほしいこと
私は、幼児期の過ごし方がとても大切だと考えています。
まず、生活習慣を整えること。
そして、身近な大人が勉強したり、何かを学び続けたりしている姿を見ること。
子どもは、大人が思っている以上によく見ています。
周りの大人が本を読み、調べ、練習し、新しいことを学んでいる。
そんな姿を日常の中で感じることは、子どもにとって大切な経験になると思います。
もう一つ、大切にしていることがあります。
勉強するためには、少しの我慢も必要だということです。
遊びたい気持ちを少し抑えて、机に向かう。
すぐにはできなくても、もう一度やってみる。
思い通りにならないことがあっても、投げ出さずに取り組む。
それは、子どもに無理をさせるということではありません。
年齢に応じた小さな積み重ねを通して、自分を律する力を少しずつ育てていくことだと思っています。
その積み重ねが、思春期に表れる
幼児期に身につけた生活習慣や学ぶ姿勢は、すぐに目に見える成果として表れるとは限りません。
けれども、子どもたちが小学校、中学校、高校へと進むにつれて、その積み重ねの大切さを感じる場面が何度もありました。
勉強が難しくなったとき。
自分で時間を管理しなければならなくなったとき。
目標に向かって、努力を続けなければならなくなったとき。
幼い頃から培ってきた習慣や姿勢が、子どもたちを支える力になるのだと思います。
これは、長年にわたり子どもたちの成長を見守ってきた私が、経験を通して確信していることです。
「なぜ勉強するのか」
高校生から何度も投げかけられた、あの質問。
その答えは、知識を増やすことや、試験で良い点数を取ることだけではないと思っています。
自分で考え、学び、努力し、人生の中で出会うさまざまな課題に向き合っていくために。
私はこれからも、ピアノのレッスンを通して、学ぶことの大切さを伝えていきたいと思っています。
2026年11月6日記